2017年8月16日水曜日

口にしたおかえりの約半分が五臓六腑をからから駆ける

八月帰日


盆の東京の静けさ。この凪のような東京を見ていると、普段の東京大都会の繁華は東京出身者のものではないんだな、と思う。

わたしは東京出身者なので、盆暮に帰省するところが特別ない。いつも通り東京の電車にのって、都内のおうちに帰るわけだけれども、お盆の時期はなんだかいつもよりもずっと、正しいところに帰っているかんじがある。どこにいてもよそものの感じがしない。すっ、と風が通っている。いつもの東京が、やたらけばけばしい、ほかのだれかのためのものに思えてくる。


しかしまた今日くらいから街にも人が増えてきて、帰省帰りっぽい人、のおおきいかばん、がそこいらじゅうに散らばっている。電車の中も、そのかばんの持ち主たちの肩のあたりから発せられているフルチャージ感とか、夢と現実の狭間で息継ぎをするときのハッ、現実にまたとびこみます、みたいな覚悟のある高揚が充満している。わたしはぼうっとそれを見ている。盆の終わり。明日からまためまぐるしく、街は波立つのだろう。わたしもどうせまた、わけわかんないまんまそれに飲み込まれていく。溺れるまえにおかえりを言うね。なんでおかえりなんだろうね。

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