2016年3月8日火曜日

梅の匂

ついこのあいだまであんなにつめたかった、氷でできた針のようだった雨が、昨日はずいぶんやさしく、肩や頬に降り注いで、夜の空気に靄をかける。もやのなかを歩いていると、ふと、ポッとなにかが香って、わたしは立ち止まった。匂い立つのは梅であろう。そう思って、あたりをくるりと見回すが、そこには、靄のかかった街並みがあるのみで、梅はなし。やさしい雨粒が、梅の花弁をトンと叩いて匂い立たせるのであろう思ったが、ちがったのか。それとも靄がかかりすぎて、梅がみえなくなっているのか。よくわからなくて、わたしは梅の匂まじりの靄を肺にいっぱい吸い込んで、なにもかもうやむやのもやもやのまま、また靄のまちを歩きます。








(このあいだのチューリップはちょっと開きすぎてしまった)

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