2016年3月16日水曜日

3:32

起きた。夜中に目覚めてしまうことが最近は多い。窓を開けるとふしぎである。夜中なのかなんなのか、しずかなのにどこか騒がしい。「動」を感じる。ゴゴゴゴ、ぞわぞわ、とうごめく。何かが。風ではない。風もあるが、むしろ、空気そのもの。窓の外の空気の粒、ひとつぶひとつぶがそれぞれ、うごめいているかんじがある。

窓を閉める。部屋はしずかである。じぶんと、シーツと、掛け布団のこすれる音だけがする。気分転換に音楽をかけた。それでも部屋はしずかであった。空気は和やかである。

朝がきたら私は躊躇することもなく、ざわざわと騒がしい窓の外へ出て行くのだろう。いまそれを考えるとぞっとする。そういえば真冬は逆に、窓の外の空気が凍らされたかのようにぴしゃりと締まっていて、ほんの少しの動きも感じられなかった。そして同じように、部屋でふとんに潜りながら、朝がきたらあのぴしゃりとしたところにわたしが行くのかと、ぞっとしたのであった。

春めきがうごめきだしている。否が応でもそのうち桜が咲くのだろう。母が病気ながらも元気だった頃、桜の季節のたびに「これが最後かしら、」なんて言いながらよく車で近場に見に行った。風が色とりどりに透けてみえて、空気の粒ははしゃいでいて、オーガンジーのスカートが翻るような、賑やかだったあの日々と、同じ季節がまた訪れる。

思えば去年の夏の終わりは、ずいぶんと静かであったし、秋も、静かであった。今日の窓の外のような空気のうごめきは、まったくといってよい程、無かった。冬も、やっぱりしんとしていた。止まっていたのだろうし、止めていたのだろう。だけど、もう、そうはいかないみたいだ。空気はもぞもぞとうごめいて、ふくらんで、パパンと鳴って花びらが舞う。



(冬物をひとつもしまわないまま春物の服を出して、さらに少し買い足してしまった。部屋が服だらけになって、旅行の支度中のよう。)




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